くらしの礎(もと)を創る・担う・つなぐ。JFEエンジニアリングの「共創」プロジェクト

#新規事業

今回は、JFEエンジニアリング株式会社様にインタビューしました。
JFEエンジニアリング内でオープンイノベーションを推進する「総合研究所 共創グループ」の皆様を、サブスクリプション型の調査サービス(※)を通じてご支援させていただいています。インタビューでは、他団体とのオープンイノベーションを進める上での難しさとその乗り越え方、そして共創グループが大切にしている想いについて伺いました。

(※)サブスクリプション型の調査サービス:
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プロフィール

写真左から
佐藤様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 共創グループ 経営スタッフ 博士)
水野 (株式会社 ISSUE RESEARCH & TECHNOLOGIES 代表取締役社長)
林様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 主席 共創グループマネージャー)
薄木様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 共創グループ 主査)


くらしの礎(もと)を創る・担う・つなぐ – Just For the Earth-

── 貴社の事業内容を教えてください。

林様(以下、敬称略):当社は、JFEグループの総合エンジニアリング会社です。もともと日本鋼管(NKK)と川崎製鉄が統合してできたJFEグループの中核事業会社の一つであり、製鉄技術や造船技術をベースとしたものづくりのノウハウを強みにしています。100年以上にわたって培ってきた技術を活かしながら、現在はEPC(設計・調達・建設)に加え、各種インフラの運営やメンテナンスなどにも事業領域を広げています。

当社は事業活動そのものがSDGsの実現に直結するものだと考えています。具体的な事業分野としては、都市環境(廃棄物発電プラントなど)、資源リサイクル、各種パイプライン、発電・電力関連プラント、エネルギープラント、液化天然ガス受入基地、産業機械・物流システム(クレーンなど)、さらには鉄の構造物や橋梁の建設など、多岐にわたっています。

林様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 主席 共創グループマネージャー)

── パーパス「くらしの礎(もと)を創る 担う つなぐ – Just For the Earth-」に込めた想いを教えてください。

林:まずJust For the Earth®は、頭文字がJFEと社名にもなっていて、地球環境やそこでくらす人々のために事業を行う、という意味を持っています。そしてそのミッションの達成のために、創る・担う・つなぐという3つの行動を大切にしています。

元々、当社はものづくりを強みとする会社であり、人々のくらしを支えるインフラ、すなわち「くらしの礎(もと)」を「創る」ことからスタートしました。そして、近年では「担う」、つまり創ったインフラを長期的に運営・維持して人々のくらしを支える事業も始めました。現在ではこの「担う」事業の比率が高まっています。さらに担う中で見えてくる課題を、次のプロジェクトや事業へ「つなぐ」という意味が込められています。また「つなぐ」には、データと人、そして社会をつなぎ、さらには未来へと価値をつないでいく。そんな広い意味を持たせるようになりました。

両者の強みをどう生かすか。大学との共創活動

── 研究所の共創活動について教えてください。特に東京科学大学との取り組みについてお聞かせください。

林:この取り組みの背景には、技術や社会・環境の変化が非常に速く進んでいることがあります。カーボンニュートラルのように「正解が一つではない」課題に対し、どのように実現すべきか多くの方が模索しています。こうした複雑な課題に対応するには、一つの視点や自社だけの力では限界があると考え、私たちは現在、オープンイノベーション型の開発、つまり「共創」に力を入れています。「将来の社会はどのようになるか」まで見据えた上で、新しいコンセプトや開発シナリオなどを、大学の先生をはじめとする社外の方々と一緒に形にしていくことを目指しています。

佐藤様(以下、敬称略):その一例が、東京科学大学(2024年10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して誕生)との連携です。2022年7月より、カーボンニュートラル分野をテーマに同大学との協働研究拠点を立ち上げ、組織間の大規模な包括連携のもとで活動を進めています。大岡山キャンパス内に拠点スペースを設置し、現地で共創活動や共同研究を行っています。現在は、複数の共同研究を展開しており、カーボンニュートラルに関する将来技術の確立を目指しています。大学との共同研究は、一般的には学術的な色が強くなりがちですが、産学が連携することでよりスピーディに社会実装を目指すことを掲げています。

佐藤様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 共創グループ 経営スタッフ 博士)

水野:オープンイノベーションとよく言われるようになって、もう7〜8年は経つと思いますが、実際には「うまく進められない」と感じている企業さんも多いと感じています。進めていく中で難しさや課題を感じることはありますか?

佐藤:企業は当然、利益を重視し、できるだけ早く社会実装や実用化につなげたいと考えるのに対し、大学はアカデミックな視点を大切にし、学術的な探究を深めることに重きを置いています。もちろん、大学が持つ深い専門性や技術は非常に価値あるものなので、そこをいかに両者の強みを活かして、実用的な技術として社会に届けられるかが重要だと考えています。ただ、企業と大学では文化の違いが大きいため、従来型のオープンイノベーションでは、そのギャップに苦労する場面はあると思います。その点、東京科学大学とは、共創型のオープンイノベーションという形で組織間の包括連携を進めています。大学側の担当窓口であるオープンイノベーション室と緊密なコミュニケーションを図りつつ、社会実装や実用化の早期実現に取り組んでいます。また、共同研究先の先生方にも企業側の立場をご理解・ご配慮いただきながら開発を進めています。この取り組みを始めて、間もなく3年になりますが、徐々に成果も得られており、もう少しで社会実装につながりそうな技術も見えつつあります。

挑戦・柔軟・誠実。共創するうえで大切なこと

── 共創グループの中で、大事にしている価値観や文化はありますか?

林: まず、JFEグループ全体には行動規範があり、挑戦。 柔軟。 誠実。の3つを大切にしています。当社は職人気質な社員が多く、特に「誠実」は強く根付いていると、私自身は感じています。

現在、全社的な風土改革も進めています。これは、心理的安全性のある職場づくり、つまり「お互いにきちんと話を聞き、丁寧に考えを伝え合い、対話を通じて納得感を持って共に取り組む」という文化を醸成しようという取り組みです。これは「共創」のベースにも通じる考え方です。共創活動は明確な正解や方法論が確立されているわけでなく、すぐに成果が出るとは限らない難しさもあります。だからこそ、チーム内でしっかり意見を出し合いながら、まずは動いてみながら進めていけるようにしたい。試行錯誤を重ねながら、たとえ失敗しても、そこから学ぶという姿勢が大切だと考えています。

── このチームの取り組みを通じて、貴社または社会にどのようなプラスの影響を与えられたら嬉しいですか?

林:私たち研究所のチームに最も期待されているのは、「新たな技術や事業の柱を立てること」だと思っています。それを実現することで、「くらしの礎(もと)を創る・ 担う・ つなぐ。」を具現化していくことにつながります。

また、こうした共創活動を通じて、社内で動いているだけでは気づかないような課題や気づきが生まれることもあります。そういった発見があったときには、積極的に社内へ発信したり、問題提起をしたりして、社内議論を活性化させていくことも重要だと考えています。

さらに、私たちは「まずはやってみよう」という姿勢で動いているので、そうしたチャレンジングな風土が、他の部署にも広がっていけばいいなと思っています。

── 新しい取り組みを通じて得た気づきや学びはどのようなことがありますか?

薄木様(以下、敬称略):私自身も以前は、研究所内で特定の専門領域に特化した業務に取り組んでいました。ただ、そのような環境にいると、自分の専門分野に限定されてしまい、どうしても視野が狭くなりがちです。そういった意味で、現在の共創グループで「新たな次の柱となる技術・事業は何か」といったことを考えるプロセスは、自分自身の成長にもつながっていますし、視野が広がっていると実感しています。

また、そうした気づきや考えを、できるだけ早く周囲にも展開し、自分だけでなく周囲にも良い影響を与えていくことが重要だと考えており、そこに挑戦しているところです。

薄木様(JFEエンジニアリング株式会社 技術本部 総合研究所 共創グループ 主査)

水野:以前「新規事業がうまくいっている会社の共通点」を調べた際、印象的だったのは、成果を出している会社ほど新規事業を「人材育成の場」として活用していたことです。人を送り込み、成長を促すことが目的として明確にありました。薄木さんのお話にも、その考え方が重なると感じました。

調査の途中でもスコープの変更ができる。サブスク型調査のメリット

── ISSUEとの活動を通じて貴社が期待することを教えてください。

薄木:大きく3点、キーワードでいうと「情報収集の加速」「インテリジェンス機能の発揮」「エコシステムの構築」です。

「情報収集の加速」は、私たちのチームでは扱うテーマが日々変わり、また専門外の分野にも踏み込む時もあります。その中で「どこから情報を集めればいいか分からない」「調査スピードが追いつかない」といった課題が生じます。ISSUEさんのような調査のプロと連携することで、正確で迅速な情報収集ができ、それが共創活動の質を高めることにもつながっています。

「インテリジェンス機能の発揮」は、社内だけで議論していると、視点が固定化してしまいがちです。ISSUEさんのような外部パートナーから「こういう視点もあるのでは」と示唆をいただけると、新たな気づきが生まれます。

「エコシステムの構築」は、他社とのアライアンス構築です。共創活動は自社だけでは実現できないので、「こういう課題を持つ企業がある」といった情報をいち早く把握し、つながる必要があります。そうした情報収集の面でも、今後ぜひお力をお借りできればと思います。

── スポット調査とサブスク調査について、使い勝手に違いを感じた点はありますか?

林:私たちは扱うテーマが日々変わるので、スポット契約だと途中で方向性を変えにくいことがあります。その点、サブスク形式だと、調査の途中でも気軽に相談ができて、フットワーク軽く対応してもらえるので、今の私たちの活動スタイルにすごく合っています。

佐藤:サブスク調査の中で「ここをもっと深掘りしたい」とお願いできる点がありがたく、まさしくサブスクサービスに求めていたサポートでした。情報収集や仮説構築の面でも、大きなプラスになっています。

水野:調査では最初に「この範囲を調べて、こういう示唆を出します」といったスコープを決めますが、進めていく中で「もっと別の方向も必要だ」となることも多くあります。一般的なコンサルでは、スコープ変更が難しいこともありますが、サブスク形式だと柔軟に対応できるため、「使いやすい」と評価いただけるのは本当に嬉しいです。

林:これからもぜひ継続してお願いしたいと考えています。

水野:ありがとうございます。そう言っていただけて、本当に嬉しいです。私たちとしても、「どう役立てられるか」までを意識して価値を出していきたいと考えています。これからも、皆さんの挑戦にしっかり伴走できるよう、より一層力を尽くしていきたいと思います。